中村英児

2019年10月15日

演技は「嘘」じゃないと危険。

最終更新: 2022年1月21日

アクトガレージ主催トレーナー・監督の中村です。

演技は台本がある限り「嘘」です。

あくまでも「作られた世界」の中を生きるのが俳優です。そして「嘘」をあたかも「本当」のように演じるのが俳優の仕事です。

なりきる事が演技にとって重要ですが、その役に「なる」事は絶対に出来ません。当たり前の事です。しかしこれはとても危険な要素を含んでいます。

よく、ドラマの共演者同士が恋愛や結婚に発展するという事があります。これはある種「作られた世界」と「現実」の境目が分からなくなってしまった例でもあります。もちろん、それぞれの境遇があるので全てとは言いません。ポジティブな関係であればまだいいですが、それがネガティブな要素を含んでいる時の事を想像してみて下さい。

俳優は作品、配役によって様々な人格を演じます。時に精神に障害を持つ人格や、犯罪者、殺人者を演じる事もあります。もし、そのような役を演じる時に、「作られた世界」と「現実」の境目が分からなくなってしまったらどうなってしまうでしょう?考えただけでも怖いし、危険な事は分かると思います。

演技はコインの表と裏のようなものです。切り離せない同じ物体ではあるけれど、用意スタートで裏になり、カットで表に切り替えなければなりません。

演技を長く続けていると、表と裏の切り替えが分かってきます。ですが、あまりにもストイックに役を追求するあまり、そのスイッチを見失ってしまわないように、特に演技を始めたばかりの人は気を付けなければなりません。

僕は未経験者や初心者の方に演技を教える時に、その切り替えの話を必ずします。役に入り込む事が「正しい」認識で理解していないととんでもなく危険な事になってしまうからです。

男がヤクザ映画を観て映画館から出てくると、みんなガニ股で出てくる。みたいな笑い話もありますが、よく、「役が抜けない」という俳優がいます。ストイックアピールであればそれは勝手ですが、分かっている人から言うと良い印象は受けないでしょう。

演技はどこまで追求しても「嘘」なのです。

悲惨で壮絶なシーンを撮影している現場は、常に笑いが絶えなかったりします。撮影現場を知らない一般の方は意外に思うかもしれませんね。

これから演技を始める皆さん、必ず知っておいて下さい。「演技は嘘」です。「役が抜けない」という言葉を鵜呑みにしないでください。

ただし、「危険な領域」もあります。それは自分自身の「トラウマ」や「ネガティブな実体験」から感情を作り出そうとする時です。一瞬で感情的に涙が溢れるような出来事を演技に使っていくのは危険な行為でもあります。俳優としては凄い事ですが、そういう時は必ず「演技=嘘」だという事を自分に言い聞かせて下さい。思い出したくないような時は無理をしない方が良いし、演技に反映するかどうかは冷静に判断して下さい。

コインの表と裏を切り替える「スイッチ」が必要です。

何度も言います。

「演技は嘘」です。

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※本記事に書かれた演技に関する学びは、執筆者である中村英児が自身の俳優・監督・トレーナーとしての経験に基づき、独自のメソッドとして伝えています。記事の無断転載はお控えください。

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執筆 中村英児

(アクトガレージ主催トレーナー)

俳優 映画監督 映像クリエイター

株式会社プロダクションガレージ

代表取締役(映像制作会社)

日本映画監督協会会員。1999年より俳優として活動。俳優業の傍ら、Vシネマでの脚本執筆をきっかけに、監督として長編映画8本を制作し都内単館映画館で次々とロードショー公開。企業のプロモーションビデオも多く手掛け、2017年、映像制作会社を設立し代表に就任。主な出演作に「アウトレイジビヨンド」(北野武監督)、「任侠ヘルパー」(準レギュラー/フジテレビ)、主な監督作品に「SAMURAI SONG」、「ニャチャンへ続く道」(ドキュメンタリー)、「つながり」(はづき虹映監修)等がある。アクトガレージでは主催トレーナーを務める。監督・俳優としての両面から指導出来る事が強み。

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