中村英児

2019年10月12日

「映像編集」と「俳優」の関係性

最終更新: 2022年1月21日

アクトガレージ主催トレーナー・監督の中村です。

俳優の皆さんは「映像編集」と「俳優」の関係性を考えた事はありますか?

一般的に俳優が映像編集に携わることはありません。俳優は撮影現場が終わればほとんどの仕事が終わったも同然です。あとは監督や編集スタッフに任せて作品が完成するのを待つだけです。

この記事は映像俳優にとって大切で知っておかなければならないものであり、もしかしたらとてもコワいものかもしれません。

映像編集で俳優の技量が分かる

ドラマの映像編集は非常に細かな所まで気を配り、長期間に渡り作業を施すものです。編集を担当するスタッフは何度も同じシーンを見て、俳優の動きの繋がりや、演技の間、俳優の表情等で本当にそのカット、シーンが成立しているかを判断し、最終的に監督に委ねます。僕の場合は自分の監督作品は基本的に編集を自分自身で行います。

俳優にとってコワいのは、ごまかしの演技や、集中できていない演技は、現場で気付かなくても、全て編集で分かってしまうという事です。

もちろん、現場で監督が納得がいかなければ指摘が入ります。しかし、全てが監督の迷いなく確信の下にOKされる分けではありませんし、全てが完璧に演じられる分けでもありません。時間や天候の都合で現場はどんどん進行していきます。編集の時点で、何故これでOKを出してしまったのだろうと後悔する時だってあります。

頼りになる俳優は編集して分かります。頼りになる俳優は、編集していても気持ちがいいものです。

目の動き、指の動き、立ち姿、メリハリ、間、などなど。

理に適ったシンプルな動作

映像演技が分かっている俳優は特に「動き」が非常にシンプルで無駄がなく、全てが理に適っています。つまり、動かなくてもいい時には動かない。動くときには「感情的に」「能動的に」動きます。瞬き、指先、眉、口、細かな個所も全てです。そんな事できるの?と思う方もいるかと思いますが、出来るんです。

また、あまり上手くいっていない演技でも編集で何とか誤魔化せてしまう場合があります。映したくない表情はカット割で使用しない方向にできます。現場でカット割増やし、上手くいかない演技はカットする前提で撮影する場合さえあります。例えば、本来は自分の表情が使われるはずのカットなのに、他の俳優の表情のアップに変えるなどの操作は編集で簡単にできてしまいます。

なぜ今、こんな事を書いているのか?

自分の演技が想像以上に上手く編集された状態をみてしまうと、上手い演技をしたという「勘違い」が生まれてしまうからです。

映像演技はそういった「編集任せ」になってしまう危険性があるのです。

だから皆さん、そういった状態にならないように自身の演技を磨いていきましょう。

技量の無さがバレてしまうのは主要キャストだけの話ではありません。端役もエキストラもです。ちょっとした役で画面に映っていて、まばたきが多いと、「あ、この子はすごく緊張しているな」とか。素人目には分からなくても、制作者はしっかりと見抜きます。もちろん現場で指摘できれば良いのですが、先にも書いたように、現場で気付けない事も多いのです。

真の評価は編集で下(くだ)る。

といっても過言ではありません。主要キャストであれ、端役であれ、あなたの知らないところで「評価」が下っているのです。台詞がないからと言って気を抜く事は許されないのです。

俳優にとっては久しぶりでも、編集する側は毎日会っている!?

俳優は現場が終了したらスタッフとほとんど会う事もありません。これは僕自身がよく経験する感覚ですが、僕が編集している作品の俳優に久しぶりに会っても、全く久しぶりに感じません。だって、画面上で毎日のように会ってますから。だから、妙に馴れ馴れしくなってしまい、俳優からはキモく感じられているかもしれません(笑)。

でも、こういう感覚を俳優の皆さんに知っておいて欲しいのです。

スタッフはあなた(俳優)の知らないところであなた(俳優)と接しているのです。

そして、それと同じように、あなたが知らない視聴者も、あなたを画面上で知るのです。

だから、映る側にはそれ相応の「責任」があるのです。

映像俳優である以上、「画面」に映っている「自分」に「全ての責任」を持って演じて下さい。そこに責任を持てない人は残念ながら現場でも編集でもあまり良い評価を受けることはないでしょう。

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※本記事に書かれた演技に関する学びは、執筆者である中村英児が自身の俳優・監督・トレーナーとしての経験に基づき、独自のメソッドとして伝えています。記事の無断転載はお控えください。

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執筆 中村英児

(アクトガレージ主催トレーナー)

俳優 映画監督 映像クリエイター

株式会社プロダクションガレージ

代表取締役(映像制作会社)

日本映画監督協会会員。1999年より俳優として活動。俳優業の傍ら、Vシネマでの脚本執筆をきっかけに、監督として長編映画8本を制作し都内単館映画館で次々とロードショー公開。企業のプロモーションビデオも多く手掛け、2017年、映像制作会社を設立し代表に就任。主な出演作に「アウトレイジビヨンド」(北野武監督)、「任侠ヘルパー」(準レギュラー/フジテレビ)、主な監督作品に「SAMURAI SONG」、「ニャチャンへ続く道」(ドキュメンタリー)、「つながり」(はづき虹映監修)等がある。アクトガレージでは主催トレーナーを務める。監督・俳優としての両面から指導出来る事が強み。

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