中村英児

2021年11月14日

相手役を受け入れろ!そして「リアル」を生み出そう。演技のコツ。

ここでまず知っておかなかければならない事は、

俳優は相手役の演技を決める事が出来ないという事。

です。

俳優が演技を決めるというのは「演出」の事です。それができるのは監督(演出家)のみに与えられた特権です。

でも、自分の演技プランが思い通りに行かない時に、自分のイメージするニュアンスで台詞を言って欲しい、ここでこう動いて欲しいなどの要望が生まれ、それを相手に押し付けてしまう事もあるかと思います。

先に書いたように「演出」(俳優の演技の方向を決める)を許されているのは監督のみです。俳優が相手役の演技を決めてしまう事は相手役の「感性」を否定してしまう事になりかねません。

では、俳優はそのような時にどう対応すれば良いのか?

相手を「受け入れる」感覚を身に付けよう。

これは言うのは簡単ですが中々出来ない事ですよね。

でも、演技の仕組みを捉えていく事で解決できます。

そもそも、演技というのは「可変的」であり「衝動的」なものです。

自分の演技プランはあくまでも「予定」であり、そうなるとは限らないという程度に考えておく必要があります。自分はここでこう動くと決めていても、相手役と合わせてみると、自分がイメージした動きを強行する事で不自然な「理に適わない」行動になってしまう事が往々にしてあるのです。

動きもそうですが、台詞も同じです。相手役に怒りを込めて言って欲しい言葉だったのに、優しく語りかけてくることもあります。準備していた演技をさせてもらえず拍子抜けしてしまう事もあるかもしれません。

そのような時に「受け入れる」という感覚が必要になります。

相手役がいる時は、自分が描いたイメージ=プランを捨てなければなりません。

演技は俳優それぞれの「感性」のぶつけ合いです。感性の「性」は「性質」の「性」であり、「個性」の「性」でもあります。演技は十人十色です。普段もそうであるように人が考えている事を想像は出来ますが決定は出来ません。例えばプレゼントを渡したときに想像以上に喜んでくれる事もありますが、想像とは逆に落胆される事もあるでしょう。自分の想像とは真逆の反応が返って来ることもあるというのが現実なのです。演技も同じく、自分のプランが覆る事ばかりです。それにどう反応していけるかが良いシーンを生み出す鍵であり、勝負であり、楽しさなのです。

演技は「台詞」が用意されている為、俳優は「未来」を知っている状態になります。相手の言う事が決定していても、それをどういうニュアンスで言い、どう動くかは演じる俳優次第なのです。

相手を受け入れるにはある程度の「余裕」が必要になります。演技中に何が起こっても動じない訓練を積んでいかなければなりません。そしてそれが楽しめるようになる演技が今よりも格段に面白く感じるでしょう。

相手役と演技を上手く構築し、リアルを作り出していくコツはプランを立てて予定通りに進行させる事を最優先するのではなく、

「演技で会話」する事です。

そう、俳優は言葉で説明するより、自分の表現したい事を演技で示す必要があるのです。言葉で説明できなくても、演技で表現した方が早いのです。俳優のコミュニケーションは「会話」でするのではなく「演技」で行うものなのです。そのレベルに達するには長い時間を要しますが、まずはここで書いたような感覚を身に付けていく必要があるのです。

「相手を受け入れる」という事は、相手役を尊重し、感性を交換し、化学反応を起こし、いつの時もワクワク、ドキドキを忘れない事です。俳優がそのような状況で演技をすることが出来れば、作られた世界であってもリアルを生み出す事が可能になり、視聴者と共にシーンの緊張感を分かち合う事が出来るのです。

受け入れよう。

グッドアクト!

※補足

もちろん、相手役が自分よりも経験が乏しく演技に迷いがある時には先輩として、経験者として教えてあげる事が必要になる場合もあるかと思います。相手もそれを望んでいる際は大いに自分の演技プランをレクチャーしてあげて下さいね。

↓こちらの記事も違った視点で書いていますので参考にして下さい。

俳優は相手役の演技を決めてはいけない!!

https://www.act-garage.com/post/acting

俳優の「未来を知らない」演技

https://www.act-garage.com/post/reaction

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※本記事に書かれた演技に関する学びは、執筆者である中村英児が自身の俳優・監督・トレーナーとしての経験に基づき、独自のメソッドとして伝えています。記事の無断転載はお控えください。

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中村英児 (アクトガレージ主催トレーナー)

俳優 映画監督 映像クリエイター

株式会社プロダクションガレージ代表取締役(映像制作会社)

日本映画監督協会会員。1999年より俳優として活動。俳優業の傍ら、Vシネマでの脚本執筆をきっかけに、監督として長編映画8本を制作し都内単館映画館で次々とロードショー公開。企業のプロモーションビデオも多く手掛け、2017年、映像制作会社を設立し代表に就任。主な出演作に「アウトレイジビヨンド」(北野武監督)、「任侠ヘルパー」(準レギュラー/フジテレビ)、主な監督作品に「SAMURAI SONG」、「ニャチャンへ続く道」(ドキュメンタリー)、「つながり」(はづき虹映監修)等がある。アクトガレージでは主催トレーナーを務める。監督・俳優としての両面から指導出来る事が強み。

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